- 作者: 橋本治
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 2001/01/01
- メディア: 単行本
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1年4ページを用いて、100年通史で書かれたエッセイ。企画としては面白く、まだ「歴史」に編入されていない過去20年ほどの現代社会史は新鮮な記述であったし、それより前の話においても、個別事象だけを見ていては気がつかなかった視点などが書かれていたりする。歴史書では無いので、著者のバイアスが露骨に表れているのだが、別段、橋本治に客観的な事実記載を期待していたわけでも無いので、そうしたことは気にせずに読み進めていけば結構楽しい作品だった。
ということで、読んでいるときは面白いと思えるのだが・・・、実は読後感があまり良くない。その理由はふたつあるのだが、ひとつには著者が100年間を語り切ったとき、読者は現代日本に対する理解が進むのかと期待したら結果はその逆で、「日本という国はなんて訳の分からない国なんだ」という思いを深める結果になるからだ。どういう哲学があり、いかなる価値観を持っており、どのような社会体制の下で、どういう希望を描いているのか、さっぱり分からないのが日本なのである、という結論を突きつけられたようで、日本人である読者(私)としては動揺してしまう。読後感が良くないもうひとつの理由は、直近10年ほどは著者も抽象化が出来なかったのか、何やら現在に近づくほどに「酷い事件」が増えているように書かれていることだ。何だか、読書後に「もうどうしようもない状況に陥ってしまっているのかな」と絶望的な気分になってしまった。