雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

crash

クラッシュ [DVD]

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 重苦しい内容だった。連鎖して起きる事故と、より深化する各人の不満。故意に引き起こされた悲劇もあれば、偶然良い結果につながった幸運な出来事もある。しかし、全体としては「救いが無いな」という印象が残った。そしてそれはアメリカにおける人種差別問題だけの話ではなく、こうした「救いの無さ」という影は(具体的な問題は別の形で現われるとしても)どんな社会にでも存在するものなのではないか。


 もしかしたらこの映画は「他者を理解するためには衝突が必要だ」というメッセージを持っているのかもしれないが、残念ながら私が受け取ったのは「他者への不信や不満を乗り越えるのは絶望的に困難だ」というメッセージであった。絶望は希望より理解しやすい。


 この映画の設定では、人間の本質は「悪」または「負」なのだろうか。各人が「I love you.」と唱えたところで、社会を覆う圧倒的な絶望感の前では、ささやかな抵抗にしかならないわけで。怒りや悲しみが密接に連携して渦巻く2時間は、緻密な構成だったからこそ、見ていて辛いものがあった。良い作品だと思ったけど、もう見たくないなとも感じた。