- 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
- 発売日: 2006/09/22
- メディア: DVD
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これはすごい。一回観た後で、続けざまに(早送りしながら)2度目を観てしまった。「えー!?」と声が出てしまうくらいにびっくりする展開なので、おそらく映画の公開時には「あの瞬間」に声(と、その後の笑い)を抑えられなかった観客がたくさんいたことだろう。2度目に観ると、至るところに伏線が置いてあるので、観る人が観れば分かるのだろうが、私は登場人物からなる物語の図式を典型的なステレオタイプに捉えていたので、それが見事に裏切られる展開に感服してしまったのだ。
そう、この作品は観客の思い込みを全てひっくり返す映画なのだ。主要な登場人物が、皆環境や周囲との関係、そして自分自身の生き方を変えていくので、その変化に動的に対応しきれない観客は驚かされてしまうのだろう。というわけで、これから観る方のためにあまり内容には触れないけれど、私はこの脚本を絶賛したいと思う。
他にも素晴らしいと思ったのは、映像の美しさと音楽の使い方の巧みさだ。冒頭から最後まで流れる調理シーンの迫力と楽しそうな雰囲気が最高なのだが、長女がイヤホンをつけたまま同僚を見るシーンもとても良かったな。他にも、街の交通風景を写すシーン、台湾的お茶の飲み方など、あらゆる場面で冴え渡るカメラワーク。本当に巧みだと思った。
あまりネタバレをしたくないのでなるべく抽象的に書いてみたが、内容についてもうひとつ書くならば、登場人物の心の描き方が非常にリアルに描かれていてすごいな、と感じたことかな。三姉妹のうち、物語の中心となる人物は次女なのだが、彼女の性格やその都度の気持ち、様々な感情や生きる姿勢について、とても丁寧に描かれていると思う。鑑賞一度目は私がステレオタイプに捉えてしまっていたためにろくに見えていなかった彼女の内面だが、二度目に観たときには、彼女がどれだけ複雑な(愛情と不安と嫌悪の入り混じった)思いで父親や姉妹に接してきたかに気付き、そのお陰でラストシーンが持つ意味を理解できるようになったかな。彼女にとってはハッピーエンドでは無いような気がするけれど、それを受け入れる器の大きさと強さを彼女は持っているのだろう。