ハンセン病の患者と、その家族を描いた番組。当時の制度のために、患者は隔離病棟に送られ、男性は断種手術を、妊娠している女性は中絶を強いられていた。そして、制度とは別に、世俗的な話として、患者の家族であるという事実だけで差別される風潮が存在していた。
今日の番組に出ていた女性は、家族と隔離されて病棟で暮らし、妊娠していた娘を中絶され、しかもその娘がずっとホルマリン漬けにされて標本にされ、そして家族が差別されることを恐れて夫と離婚していた。ひとりの人間として、どれだけ苦難に満ちた人生だったろうかと思う。
彼女は家族との写真を撮っても、差別を恐れて自らの顔の部分を削り取って分からないようにしていた。生まれることのなかった娘に名前をつけ、数十年経ってから初めて対面することが出来たとき、彼女は娘に向かって「桃子ちゃん、(生んであげられなくて)ごめんね」と泣いていた。棺を開けて、「ずっと裸で、冬はさぞ寒かっただろうね」と用意していた着物で娘を包んでいた。
怒りも悲しみも表には出さず、穏やかな表情でインタビューに答える彼女を見ていると、生きることの苦しみが私にも少しだけ分かった気がした。家族を奪われることよりつらいことがこの世にあるだろうか。