雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

心を知る技術

心を知る技術

心を知る技術


 学生時に受講した心理学の講座はほとんど意味が分からなかったし、あまり面白くなかったのだが、この本はそうした過去の思い出を吹き飛ばしてくれた。著者の高橋和巳氏は、自らのカウンセラー経験から抽出した「心の構造」を非常に分かりやすく伝えてくれる。理論的な体型知識が身につく本ではないが、私が求めているものはほとんどこの本に描かれていた。「なるほど!」と感嘆しつつも、著者の言わんとするところは、それほど実感から外れたものではない。


 「道は開ける」も「悩み」を主題としていたので、これと関連付けて読んだら、とても理解しやすかった。

  • 悩みを解決するには、他者による受容が先に必要となる。
  • 受容する側は、焦りと怒りと動揺に打ち勝たなくてはならない。
  • 悩みを生み出す原因は自分自身にあり、それは「思い込み」である。
  • 欲求を抑え込むための「経験としての思い込み」自身に気付くこと。
  • 思い込みを乗り越えるとき、心はすでに新しい世界を手に入れている。


 私も、自分自身のことを考えてみると、一般に「良いこと」とされてきた態度というか習慣のようなものが一方で自身の行動や思考を制限していることに気がついた。私の場合、それは「欲望を抑えること」であり、自分の欲求を表に出さない習慣をいつの間にか身に着けてしまっていた。それは幼いころから植えつけられた、もしくは周りの環境に合わせて自ら見につけた習慣であり、あまりにも自分自身に深く埋め込まれてしまっていてなかなか気がつかなかった。自分自身がどうのような価値観をもっているか、なんてことはそう簡単には分からないものだ。この本を読んで色々考えてみて、ようやくぼんやりとその輪郭が見えてきたように思う。


 また、この本のおかげでカウンセラーという職業が少し理解できた。なるほど、心が病気になったときに、自力で治癒するためのサポートをしてくれるということか。難しくて辛抱が要り、その責任は重いが意義のある素晴らしい仕事だと思う。