今日はバンコク市街を観光した。王宮のあたりに色々と名所があるようなので、行ってみることに。しかし、王宮までの行き方がよく分からない。バスは仕組みがよく分からないし、便利で安心なスカイトレインもホアランポーンまでしか行かない。
ガイドブックを見て、次のような計画にした。サムヤーン駅まで行って、パンダバス(マンダリンホテルにある日本人向けの旅行会社)で今夜のショーのクーポンを手に入れて、歩いてホアランポーン駅を見て、そのままワット・トライミットを見学し、水路を利用してワット・アルンを眺めてから王宮へ突入。そのときは完璧な計画だ、と思ったのだが・・・。
ワット・トライミットを見るまでは順調にすすんだ。途中の銀行で両替も済ませたし。ワット・トライミットで黄金でピカピカの仏様を拝む。日本の仏像も中世の頃はこのように輝いていたのだろうか。このような輝く仏像よりも、時代が経つにつれて輝きを失った仏像の方にありがたみを感じるのは、おそらく私が仏像とはこのようなものだという固定観念を持っているからなのかもしれない。豪華すぎる仏像にありがたみは感じないが、しかし黄金というものはこんなにも輝くものなのか、としばしぼんやり眺める。タイの国民の拝み方はとても丁寧だなあ、と思う。
計画が狂ったのはここからだった。船に乗ろうにも港が分からないのだ。地図をみていたのだが、気付いたら迷子になっていて、中華街に入ってしまった。まあいいや、せっかくだからふらふら歩いてみようと思ってから1時間近く歩いたのに中華街から抜けられなかった。金色に輝く装飾品店、よく分からない食べ物を売っている屋台、ゴミのような商品を売っている雑貨屋(100円ショップみたいな)ばかりが続く。細い路地に入ると、小さな商店や家内制工場が続き、独特の臭気が漂っていた。道路の表記もタイ語だから読めないし、自分の勘と地図を頼りに歩き続けてようやくワット・ポーを発見した頃にはもう昼過ぎで、暑いし疲れたし汗だくだった状態に更にスコールが来た。おお、すごい雨だ。遠くにワット・アルンが見えるが、雨のために船も出ない。日本の夕立のピーク時の勢いが1時間近く続く。疲れた。
雨の勢いが少し弱くなったのをみて、ワット・ポーに入る。巨大な涅槃仏が寝ている。仏が寝るという発想が面白い。そりゃ仏だって横にもなるわな。それにしてもでかい。
ワット・ポーはタイ古式マッサージの総本山と言われているらしいので、是非マッサージを受けてみたかったのだが、場所が分からず(閉まっているなんてことあるのかな?)、しばらくうろついてみたが、諦める。そのまま王宮へ。なかなか立派なところだった。大きなお堂に大勢が集ってお経を読んでいたので、後ろの方で何をするでもなく、ぼんやりと聞いていた。
3時ごろ、王宮を出るころには雨も上がり、いい加減空腹に耐え切れなくなっていたのだが、街中の屋台の食べ物はどうにも怖い。一回くらい食べてみようと思ったりもするのだが、その後の胃腸を状態を想像して、一歩踏み出せない。サイアムのあたりのレストランで食べようと思い、帰ることに。
ただ、どうやって帰るかが問題だ。トゥクトゥクに乗ってみようとしたが、交渉がうまくいかない。私が「いくらだ」と尋ねると、相手の返事は「それはあんたが決めることだ。いくらがいいんだ?」と逆に質問される。質問に質問で答えるなと学校で習わなかったのかという台詞が頭に浮かぶ。適当に金額を言ってみたところ、大笑いしてそんな金額のわけないだろう、みたいなことを言われて交渉が始まる。だが、私は空腹だったし、疲れていたので交渉する気力もなく、諦めてタクシーに乗ることにした。ただ、このタクシーの運転手も「to siam station」と何度も言ったのに、何故かホアランポーン駅で降ろそうとしたり、(多分)意味無く遠回りに走ったりしたり、道路が異常に混雑していたりしてとても不愉快だった。物価は安いし、多少費用がかかっても気にしないが、不安になるのは嫌だな。
なんとかサイアムに着き、ガイドブックに従ってレストラン「Seefah」を見つけ、遅めの昼食。豚肉と野菜と豆腐の丼と、トムヤムクンを食べる。どちらも非常に美味しい。トムヤムクンは辛さと酸味が独特の味わいで、とても気に入った。飲み物をつけて約800円。
電車でナナまで戻り、近所のマッサージ屋さんに行くことに。探すまでもなく、街のいたるところにマッサージ店はあるのだが、ガイドブックに掲載されている店に固執してしまったことが失敗のもと。知らない街で店を見つけるのは当然難しいわけで、大通りに面していない限り、店を探しているうちに迷子になるだけなのだ。昨夜も今朝も迷子になったにもかかわらず、また迷子になってしまい、細い路地に入り込み、おなじところを1時間以上うろうろする。何でマッサージを受けるためにここまで疲れなくてはならないんだ、とようやくあきらめて、大通りの店に入る。全身2時間コース(約2500円)。ほどよい力加減でウトウトしてしまう。昨夜の「有馬温泉」よりは気持ちよかったかな。
リフレッシュして店を出ると、もう周りは暗くなっていた。朝、パンダバスでチケットを購入したショーを見に行くことに。店の名前は「manbo」、観光客に大人気のニューハーフショーの老舗である。
店はスカイトレインから歩いて5分くらいのところ。店の周囲だけやたら明るくて、エサ上げの商売用に象がいたりするのでとても目立つ。夜10時からのショーは、踊りあり笑いありの楽しいものだった。トップクラスの人達は本当に綺麗で驚くほど。見せるべきところは上見せ、笑わせるべきところはしっかりツボを押さえる、実にプロフェッショナルを感じさせる素晴らしいショーだったと思う。パンダバスのクーポンだと約800円くらいになる。安い・・・、と思っていたら、最後にやられた。ショーが終わって客が帰るとき、先ほどまでステージで踊っていたニューハーフの出演者がお見送りをしてくれるのだが、その際、記念写真を是非取るように進められるのだ。大抵の観光客は、それを薦められて断ったりはしないもので、私も記念に1枚とることに。私を囲む6〜7人のニューハーフのお姉様方と一緒にパチリ。で、カメラを返すときにチップを求められるのだが、写真に写った人全員が個別にチップを求めるのだ。しかも、あちこちにプラカードで「チップは50バーツ(約130円)以上で!」との注意書きが。しかもそのとき私の財布には100バーツ紙幣より小さな額のお金が無かったので、結局600バーツのチップを渡すことに。結局ショーの値段を合わせて約2500円くらいかかってしまった。後で考えてみたら、チップなんて必ず渡さなきゃいけないものじゃないし、断れば良かったのになんで当然のごとく払ってしまったのだろう、と自分の意思の弱さを情けなく思ったり、逆に「遊びに来ているんだからそれくらいの金額で何をくよくよしているんだ」と遊び慣れしていない自分を恨めしく思ったりした。上手にお金を使うということはとても難しくて、その技術は所有している金額とは無関係のものなのだと思う。お金を使う技術は、おそらくその経験の蓄積によってのみ磨かれていくもので、そもそもお金とは本来使う(モノやサービスと交換する)ために存在するものだということから考えても、日頃あまり意識していないこの技術を身に付ける必要性は実は高いのではないか、と思った