雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

夜雲

良く晴れた寒い日の夜は、空が澄んでいて星が綺麗だ。
走る自転車の運転手は、上ばかり見ている。



夜に見える雲が好きだ。
暗い空には白が映える。
夜雲が山から立ち上がる光景は、私の時間感覚を狂わせる。
もうすぐ朝が来るんじゃないのか、と錯覚してしまうのだ。
一日はこれから始まる、という気分で家に向かう21時。
自転車の運転手は笑みをこらえるのに必死だ。



交差点で鳩の死骸を見つける。
朝通った時には無かったはず。
澄んだ心は無防備で、思わず涙があふれ出た。
こんな小さな悲しみは、見過ごしていくのが大人のルール。
道端に落ちていた鳩の死体を見て泣くなんてどうかしてるよ。



運転手は上を向いたまま、自転車は進む。
星も雲もとてもきれいで、時々立ち止まって空を見る。
家に着いてスーツを脱ぎ、鳩のことを思って一度だけため息をついた。