雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

 花に嵐の喩えもあるぞ

 彼が死んでから、今日で一年になる。私と彼は同期入社で互いに新人、しか
も同じ社宅に住んでいたから親近感は強かった。それほど親密に付き合ってい
たわけではないが、仲間であるという意識は深いものだった。



 彼はトラックにはねられて死んだ。即死だったらしい。私はご近所さんのくせし
て、彼の死を知ったのは一週間後だった。あまりにも近い存在だったから、いつ
でも会えると思っていたのに・・・。今も彼の部屋は空いたままで、入居者を待っ
ている。私は外出する際に必ずその部屋の前を通らなければならないので、彼
の死後一年間、毎日その扉を横目で見ては彼の死を確認していたことになる。
彼は、私の中で、何度も死んだ。



 死は突然やってくる。それは仕方の無いことだけど、それでも、もう少し後でもよ
かったじゃないか。楽しいこともつらいことも、これからたくさんあって、その後で
死ねばいいじゃないか。生きる以上は、「見るべきものは見つ」といって死にたい
じゃないか。君の死は、不必要に、早過ぎた。



 あまりにもタイミングの悪い彼の死は、その後も私から離れなかった。仕事がつ
らいときは、必ず彼の顔が目に浮かんだ。ボーナスの明細を見たときも、彼のこ
とを思い出した。頑張らなければ彼に申し訳ないじゃないか、と自分に言い聞か
せた。・・・人生に先延ばし出来ることなんて無いということを、彼の死に学んだ。




 彼が死んでから、今日で一年になる。私には、酒を飲んで泣くことしか出来な
い。それが、とても悔しい。