雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

何も起こらなかった土曜日の昼過ぎ

 久々に珈琲を飲んだ。
 飲みながら、また文庫本の続きを読む。


 久々だったからなのか、空きっ腹に入れたからなのか、カフェインの回りが早く
て強い。軽い眩暈と胃の締め付けが起こり、やたらと焦って不安感に包まれる。
それでいて思考はとても明晰で、絶えず何かを求めている感じ。ああ、そうだ、
こんな感じだったなあと懐かしさを少し覚える。


 アクセルを踏んだままの状態で挑んだ三島由紀夫の文章はやたらと鬱陶しく
て、まだ咀嚼中で良く理解できてないのに次のページをめくりたくて仕方が無い。
どうやらいつもの愚鈍な調子の方が読書には向いているようだ。苛々してきた
ので諦めて本を閉じ、散歩することにした。


 アパートを出て数歩もしないうちに小雨が降ってきたが、それもまた悪くないと
妙に寛容な気分で歩く。近所の田んぼの稲はもうすっかり大きくなっていて、その
黄金色の平面はうっとりするほど美しかった。


 ふと、田んぼの中に白い猫を見つける。というより、向こうが先に私を見つけて
いたようだ。互いに目を合わせて、おそらく向こうさんはこちらを警戒していたの
だろうが、私は「田んぼに猫の食べ物なんてあるのかな」などとぼんやり考えてい
た。カフェインの効き目も治まってきたようだ。


 雨も強くなってきたので、近くのスーパーでたけのこの里を買って帰る。アパート
の廊下で、干からびたアオガエルの死体を見つける。骨と皮しかない、まるで誰
かが意図的に作ったかのような蛙のミイラ。もっと早く田んぼに帰れば良かった
のにね。



 そして私は部屋に戻り、いつもの愚鈍な調子で「仮面の告白」を読み出した。