雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

ガリア戦記

 

ガリア戦記 (講談社学術文庫)

ガリア戦記 (講談社学術文庫)

 

 

カエサル著、國原 吉之助翻訳。「カエサル著」という5文字のパワー(もしくは違和感)がすごい。極東日本の一市民が、今から2070年前にローマ帝国の頂点に立っていた男が書いた文章を読む、という読書体験自体が奇跡的であり、大いなる歴史を体感できた。

 

正直なところ、内容はさほど面白いとは思えなかったが、あのカエサルの書いた書物が読めるというだけで興奮してしまう。すごいと感じたのはその文体で、簡潔で読みやすく、まるで第三者が書いたかのような客観性。ものすごく分かりやすい。これが2000年以上昔に書かれた文章なのか・・・。

 

 翻訳については、一点ささやかな違和感があった。訳者は「ぎょうさんの」という形容詞を多用しており、これは「ものすごく多くの」くらいの意味なのだろうが、関西人にとっては「ベタベタの関西弁」に読めてしまうのだ。カエサルが格調高い文章を書いている中に、突然コテコテの関西人が扇子片手に出てきて「いやー、ぎょうさん儲かったがな」みたいな感じでしゃべりだすイメージ。「ぎょうさん」が出てくるたびにずっこけてしまった。

 

それにしてもカエサルは、どうしてこんなにすごいのだろう。戦争には、武力や志気だけでなく、補給や支援体制が必要なことを2000年前に書いてくれていたのに、どうしていまだに日本では精神論が幅を利かせているのだろう。久しぶりに「ローマ人の物語」が読みたくなった。