雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

訃報:吾妻ひでお

漫画家の吾妻ひでおさん死去 | 共同通信

 

私にとって、吾妻ひでおと言えば「失踪日記」と「アル中病棟」だ。どちらも、ふと読み直したくなるときが度々あり、読みだすと最後まで止まらない。吾妻氏の体験そのものも衝撃的なのだが、それよりもすごいと感じたのは、自分のことをここまで突き放して表現することができる、吾妻氏の自らの人生に対する「覚めた視線」だ。

 

行き詰まる自分を、ダメな自分を、どこへ向かうのか分からない人生をありのままに描き、自身も含めた世界そのものを笑いに変える。道徳規範や秩序にとらわれず、自らの生き様を晒しながら新しい道を切り拓く。そうした無頼派スタイルは、西原理恵子と共通している。

 

そうした人たちの著作を読むと、いかに自分の人生がちっぽけか、思い知らされる。それと同時に、自ら作った人生の枷が外れていくようで、少し自由な気分になれる。だから、私は「失踪日記」を時々読み返す。私にとっては、そういう大切な本なのだ。

 

生きている限り、人生は続く。と書いたところで、単なる同語反復に過ぎないのだが、この当たり前の台詞を自らの話として受け入れるには、覚悟がいる。「アル中病棟」を読んだ後なら、分かってもらえることだろう。