雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

あん

 

([と]1-2)あん (ポプラ文庫)

([と]1-2)あん (ポプラ文庫)

 

 

 

 原作はドリアン助川著。学生のころにラジオから流れていた「ドリアン助川の正義のラジオ」を思い出しながら、本書を手に取った。そして読了後、これは確かにドリアン氏が書いた本だと改めて思った。どんな人でも生まれてきたことに意味はある、言葉にすれば陳腐だが、本書を読めば、その言葉の重さが心から理解できる。

 

 ハンセン病が徳江に課した過酷な人生と、仙太郎の揺れ動く頼りない人生が重なる。そんなふたりの手紙のやりとりは、とても心に響いた。私も小豆を自分で炊いて、あんを作ってみたい。

 

 なお、映画は河瀬直美監督、樹木希林主役。永瀬正敏も含めて、良い配役だと思ったが、物語の大事な部分を省略しすぎてしまっている。徳江が店を辞めるシーンが描かれていないこと、徳江と仙太郎との手紙のやりとりが短すぎること、なぜ徳江が「私は聴くために生まれてきた」と思うようになったかの経緯が描かれていないこと等。

 

 原作を読んでから観ると、「そこが大事な場面だろう」と思わず突っ込んでしまう。あくまで端役のワカナ(内田伽羅)についてはもっと省略して良いし、桜の美しさを長々と映す時間があるのなら、原作のもつ物語の意味をもっとストレートに打ち出してほしかった。