雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

辺境・近境

 

辺境・近境 (新潮文庫)

辺境・近境 (新潮文庫)

 

 

 村上 春樹著。著者の紀行文は、小説とは違った味わいがあり、淡々と描かれているようでかなり面白い。著者自身もあとがきで書いているように、旅は、日常と少し異なる環境に身を置くことだけれど、まるきり別世界にいくわけでもない。あたかも散歩の延長であるかのように、本文は飄々と書かれているけれども、それはきっと意図的な書き方なのだ。だから、読者は共感できるし、一緒に旅を追体験しているような気になれるのだろう(大仰な文章はかえって読者を遠ざける)。

 

 ノモンハン編は読みごたえがあるし、讃岐うどん編もディープで面白いのだが、一番印象に残ったのはメキシコ編。カオスだ。特に、バス車内、「絶対に故障しない」音響システムで流れ続ける大音量のラテン音楽。思い返しても笑えてしまう。