雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

フェルマーの最終定理

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)


 サイモンシン著、青木薫訳。数学の、とある問題をめぐる話でありながら、壮大に歴史的で劇的な、非常に面白い内容だった。500ページにわたる物語の中で、著者が上手に噛み砕いて説明し、誘導してくれたおかげで、本定理の証明にかかる具体的な省察については全く分からないままに*1、その枠組みと言うか、考え方については何となくわかったような気にさせてくれる。


 最終的にはワイルズ氏が証明したけれど、それは過去多くの数学者の積み重ねがあってこその完成なわけで、学問を歴史的に捉えたときには、失敗も含めて「無駄」というものは存在しないのだと思えてくる。もっとも、フェルマーの「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」という一言がなければ、この話はそこまで熱い物語を生みださなかったかもしれないが。

*1:おそらく、私が一生涯かけても理解できないレベルの話だということは分かった。