雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

不夜城

不夜城 (角川文庫)

不夜城 (角川文庫)


 馳星周著。新宿歌舞伎町を舞台に、上海、北京、台湾の各マフィアが繰り広げる抗争を描く、徹底的に冷徹なハードボイルド小説。騙し、騙される展開にのめり込み、一気に読み耽ってしまった。物語が進むにつれて、主人公である劉健一の人物像が明確になっていき、作品の最後に「やはりこいつは骨の髄までこういう男なのだ」と思い知らされるわけだ。いや、素晴らしい。


 主人公は、日本人と台湾人のハーフ(半々)である。それ故に、彼はどこにも所属することができず、異端者として生きるよりなかった。闇夜の蝙蝠のように、アンテナを研ぎ澄まして闇夜を飛ぶより他に仕方がなかったのだ。彼にとって、他人とは利用するかされるか、もしくはカモるかカモられるかの対象であり、それ以外にはありえなかった。そして私は、主人公のそうした生き方に共感したのだ。

身分を変えようなんて、馬鹿な考えもいいところなのだ。基本的なところで人の内側は絶対に変わらない。おれは半々として生まれ、半々として死んでいく。それだけだ。