雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

NHK世界のドキュメンタリー“マダム・ムラ”で昼食を 〜フランス 家族食堂の100年〜


 地元で長年愛され続けてきたレストランを取り上げたドキュメンタリー。家族食堂、という昔ながらの経営手法のレストラン。元々は、出稼ぎに出てきた労働者が食べる場所がなく、普通の民家で家族と同じもの(シチューとか)を一緒に食べていた、というものらしい。


 地域に根付いたレストランは、近隣の労働者にとっては生活の場であり、近隣住民にとってはコミュニティを支える場であり、地域の食文化を語り継ぐ装置であり、そしてオーナー一家にとっては生きていくための金を得る場でもあり、生きがいでもある。そういう様々な側面を、丁寧に、楽しく、鮮やかに描いている良い番組だった。


 もちろん、飲食店の経営は楽じゃない。サービス業である以上、するべきことは山ほどあるわけで、とにかく働きづめになってしまう。フランスでも伝統的なレストランは姿を消しているようだが、その理由は労働状況が悪すぎるから、と分析されていた*1。それでも、「人間、怠けていてはダメよ」と生き生きと働くマダムを見ていると、レストランというものは本当に素敵なものだなあと思うし、自分が外食好きであることの理由が少し分かったような気がした。スペインを旅行したとき、バルが楽しくて毎日通ったときも、上と同じようなことを感じたことを思い出す。食べる、という行為は、決してモノを腹に詰めるだけのことではない。


母は14歳から働きましたが、これまでずっと幸せな人生だったと思います。仕方なく家業を継いだとはいえ、与えられた仕事を自分のものとしてしっかり続けてきました。このレストランは母の人生そのものです。

*1:EUの規制により、衛生面の理由から昔ながらの手法がとれなくなったという側面もあるようだが。