雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

錯乱のニューヨーク

錯乱のニューヨーク (ちくま学芸文庫)

錯乱のニューヨーク (ちくま学芸文庫)

 最先端の近代都市ニューヨークの変遷を、建築の歴史という観点から描くことによって「ニューヨークらしさ」の核を突き止めた書籍。はっきり言って読みにくい文体のレム・コールハースだが、それでも面白い。欲望と娯楽の実験地コニーアイランドや、グリッド線とゾーニング法によって「針」の形をした建物ばかりが生えていく様子、そうした話を通して人と都市の関係を色々考えることが出来た。


 街は上を向いて伸びてゆき、広さと太陽を失った市民は娯楽や自然や健康や文化を建物の内部に持ち込もうとする。自己完結志向は強まり、移動手段の確保を解決する手法は立ち遅れる(もしくは夢物語ばかり出てくる)。長い歴史を持たない、それでいて「世界一の都市」だからこそ許される、数々の実験や多用な構想・・・それらから感じられるのは、この街が「生きている」ということ。どこに向かっているのかは分からないが、ニューヨークはどんどん進み、立ち止まることはないようだ。