雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

NHK「ザ・ベストテレビ(後編)」

 即時の伝達機能や最大公約数的な視点の共有は報道部門が、娯楽はバラエティやドラマが担うのであれば、ドキュメンタリー番組はマイナーな視点、つまり弱者の視点からの問いかけを拾う役割を持っているのだろう。しかし、もしもメディアが民主主義を支える公器の役割を担う存在なのであれば、ドキュメンタリー番組が少ない現状はどうなんだろうか。

  1. “地方の時代”映像祭2007グランプリ「約束〜日本一のダムが奪うもの」(東海テレビ放送
  2. 日本民間放送連盟賞「祖国よ〜ドミニカ移住は問う〜」(南日本放送
  3. 同賞「石炭奇想曲 夕張、東京、そしてベトナム」(北海道文化放送
  4. ATPグランプリ「特捜!ザ・リアル海猿」(テレビ朝日

 前者3作品は、いずれも組織と個人という視点で作られていた。国にしろ自治体にしろ会社にしろ、組織である以上は自己防衛のために個人を切り捨てることも往々に起こる。「国っていうのはそういうものなんだ、ということをもっと我々は自覚すべきだ」と言った森達也氏の指摘は正しいだろう。もちろん、それは不信感を抱けというメッセージで終わるものではなく、正しい認識を持った上でどう政治(社会)に関わっていくべきかを考えましょう、というところまで含まれているのだろうけれど。


 最後の作品が一体何故グランプリを取れたのか分からないけれど、とりあえず感じたのは次のようなことだ。

  • バラエティの手法(発言は全てテロップ表示、煩いBGM、煽り)をそのままドキュメンタリーに持ち込むべきではない。
  • ドキュメンタリー番組の場合、大抵は素材が良いのだから、足し算(演出≒強調する)ではなく引き算(編集≒切る)の発想が大事なのではないか。
  • 「たったひとつの言いたいこと」だけを伝えるために文脈を整理することは、文章でも映画でもテレビ番組でも大切だということ。


 はてなダイアリーの言及では、こちらの方のコメントが印象深かったので引用させていただきます。

「とにかくその場その場で威勢のいい言説や人物や支持される」というだけの状況は本質的にはさほど何も変わっていない。
http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20080622/p3