雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

インド旅行5:ティルヴァナマライ〜ヴィルプラム〜ティルチー

 6時過ぎくらいに目が覚めた。外は良い天気だ。昨夜は悔しい思いをしたし、どうにもこの街は居心地が良くないのだが、間違いなく二度とこない街で負けっぱなしは気にいらない。何かしなくてはこの街から出るわけには行くまい。などと、日が変わったためか積極的な気分になったのは良いが、何をするべきか良く分からない。とりあえず街に出よう。

 
 昨日やられた寺院へ行き、カメラで写真を撮る。見る分には、やはり立派な寺院だとおもう。早朝にもかかわらず喜捨を求める人が群がるが、断る。街中をぶらぶら歩いて、やはりここも普通の街で、牛がいて、屋台があって、住民がチャイを飲んでいることに変わりはないのだと気づくと、少し安心した。例え観光客がほとんどいないからといって、身構える必要など無かったのだ。

 
 どんどん街中を歩くと、スーパーマーケットを発見。御香や食料、水などを買う。土産品より、現地の普通の製品を見るのは面白い。やはり外国人は珍しいのか、店内の人全員がじーっと見てくる。


 LPによると、この街には寺院以外にも有名なところがあるそうだ。名前はアーシュラム。瞑想などを行う修行場らしい。どんなところか行ってみよう。距離が遠いので、オートリキシャーで行くことにする。初めてのリキシャー。値段を交渉して、2台目のリキシャーで交渉成立。やはりドアが無い。車と車の間をすり抜けるように進むのは、少し怖くもあるけれど、早いので快適だ。10分ほどで着く。現地でリキシャーに待ってもらい、寺院の様子を眺める。裸足になるように注意された。アーシュラムの中は静かで、穏やかな雰囲気。建物の中で瞑想を行っている人がいた。こんなところでのんびり本を読むのも悪くない。


 ホテルへ戻る。そろそろ次の街へ行こうという気になったので、ホテルの親切な従業員さんにお別れを言い、リキシャーに乗ってバスへ向かう。バス停は、案内所や時刻表どころか、なんの案内看板も無く、ただバスが40台くらいあるだけ。どのバスへ乗るべきかさっぱり分からず、ひたすら訪ねる。何故か聞く人によって答えが異なるのが不安なところだが、どうにかヴィルプラム行きのバスを発見。本当に最初から最後まで観光客に優しくない街だった。まあ、そういうところに行ってみたかったのだから、目的は達成できたのだが。


 ヴィルプラムまでの途中、経由する村の子供がみな手を振ってくれる。外国人だからだろうか。とても嬉しかった。


 ヴィルプラムの八百屋へ。向こうはすぐに私を見つけて、招いてくる。今日は隣の店へ行き、バナナを5RSで購入しようとしたら、兄さんなんと「バナナは10RSだ」とのこと。おいおい、と隣の店の兄さんへ聞くと笑って助けてくれない。ある意味、予想はしていたのだが。交渉したら5RSで買えると思ったが、まあいいや、と10RS払う。ここはお国柄が出た気がする。


 さて、次はさらに南下しよう。電車にのって、大きめの街。Trichyへ行こう。


 ヴィルプラムの鉄道の駅まで、乗り合いタクシーに乗って移動する。リキシャーは15RSで交渉しようとしたら誰も相手すらしてくれなかったが、乗り合いタクシーはたったの2RS。不安になるくらいに安い。タクシーに途中で人が乗り降りしながら、ぎゅうぎゅう詰めになった車は鉄道駅へ向かう。15分くらいで到着。Trichy行きの一番早い鉄道の切符を購入して、発車まで1時間ほど時間があったので、ネットカフェなどで時間を潰す。


 初の列車だ。とりあえず自由席のチケットなので、どの車両に乗るべきかを駅員さんに聞き、飛び込む。想像以上にボロボロな列車に入ると、すごい人込みである。自分の立ち居地を確保するだけでやっとであった。座れるかもと思っていた私が間違いだった。しかも明らかに外国人は車両に私しかいない。観光客はお金を払って指定席を買うものなのだろうか?

 周りの年配の方が話しかけてくれたが、英語ではなかったので理解できない。私は現地の言葉が全く分からないので、英語が通じなかったら身振り手振りしかない。どうやら、チケットを見せろということらしい。どこまで行くのか
を聞いているのか?「ティルチー」というと、皆分かってくれたようで、「ああ、この列車で合っているよ。」「あと3時間だ」などと教えてくれた。なんと、3時間立ちっ放しか・・・と、気が遠くなった。


 いくつかの駅を過ぎているうちに、後ろから肩をたたかれ、振り向くと席が空いたから座れとのこと。他にも立っている人がいるので悪い気もしたが、何分疲れていたので有難く座ることにした。向かいあっている男性はLPに興味を持ったらしく、見せてほしいという。渡して、本の説明をしつつ、色々話す。彼はこれからTrichyからMaduraiを経由して海へ出るとのこと。到着はこれから12時間後だそうだ。すごいな。私もその街へ行ってみたかったのだが、時間の都合で諦めたのだった。ちなみにLPは面白かったらしく、参考になったといわれた。

 
 到着予定時刻の30分前くらいから、周りの人が「次はTrichyだ」「降りろ」と教えてくれる。皆、私が降りることを覚えていてくれたようだ。ありがたい。


 問題はここからだった。間違いなく、今回の旅で一番大変だったのは駅を降りてからの10時間。


 ホテルがどこへ行っても満室なのだ。荷物を持った身には、ホテルまわりもつらいもので、それでも頑張って10件くらい尋ね続ける。が、だめ。

 ガイドブックに載っているホテル全てを訪ね、ここが最後の希望だとフロントに行ったとき、前に二人組みのバックパッカーがいた。前の二人が断られたときに声をかける。彼らも同じくホテルを探して断られ続けているとのこと。

 どうやら、今日と明日はTrichyで結婚に関する祝日らしく、多くのカップルが結婚式をするのでホテルが満室になっているとのこと。さすがにそんな情報はLPにも書かれていない。

 旅行者2人組と話し、もうこの街に滞在するのは諦めたほうがいいのではないか、という話になった。かなり旅慣れているらしく、決断が早い。実際、そうするしかないのだが。彼らは北のpondhicherryへ、私は南のMaduraiへ行くことにする。

 駅で列車を調べてもらう。お互い、夜行列車に乗ることになった。切符を買い、話をする。彼らは結婚しており、旦那はアメリカ人、奥さんは台湾人。インド放浪はもう9ヶ月目とのこと。すごいな。仕事は文筆業関係らしく、メールのやりとりでなんとかしているそうだ。「帰りたいと思ったことは?」と聞くと、「何度もある」と答えたのが面白かった。そりゃそうだよなあ。それでも飛行機のチケットの期間が許す範囲で、長く滞在するつもりだとのこと。タフだなあ。

 ふと思ったのは、彼らとの会話が非常に簡単だったこと。理由は、発音がきれいだったから。

 彼らを別れて、列車に乗り込む。夜行列車だが、駅員さんによると約2時間後には降りなければならないので、寝るわけにもいかない。眠い。座ってぼんやりする。座って仮眠をするが、寝過ごすのが怖くてすぐに目が覚める。1時間半ほど経過してからは、起きているひとを見つけてはMaduraiはまだかと聞き倒し、ようやく降りる。2時過ぎ。マドゥライは大きい街なのでホテルくらいあるだろう。

 駅から降りると、深夜なのに人が群がる。リキシャーはどうか、ホテルはどうか。いつもなら自分の足で探すが、疲れと時間帯からホテルを教えてもらうことにした。もう今日は泊まれるならどこでもいいや。

 いつまで経ってもホテルに着かない。というより、結局このおっさん、ホテルを探しているだけなのだ。なんだそりゃ。猛烈に腹が立った。もうお前には頼まない。どうせ、Maduraiも泊まれないのだ。もういい、今日は野宿する。


 駅なら、まだ安全かな?寝ている人もたくさんいたし、駅員もいることだし。ということで、駅の待合室で皆が雑魚ねしている中にもぐりこむ。


 蚊がひどい。長袖を着て、布をかぶり、虫除けを塗り、最後には蚊取り線香を炊いたが、それでもさされまくった。全財産を身に着けているので、盗難を避けるためにも熟睡はできない。携帯を1時間おきに目覚ましをして、なんとか身体と頭を休める。

 ・・・なぜこんな目に?

 帰りたい。